ヒーラーの声

動物に癒しを求める“アニマルセラピー”はいいけれど、そこに留まらないでください!

No.076

先日、NHKのテレビ番組「偉人たちの健康診断」を見て、西郷隆盛が犬をとても可愛がり、飼い犬との間に深い愛情関係を築いていたことを知りました。

最近では、人間同士だけでなく動物(ペット)との間に愛情関係を築くことで“オキシトシン”という癒しホルモンが分泌され、心が癒され喜びがもたらされるようになることが分かってきました。そして驚くことに犬の側にも“オキシトシン”が分泌され、人間と犬の双方に喜びが高まるようなメカニズムがあるということです。こうした愛情関係のメカニズムを知って、私はとても感動しました。

ペットブームの現在では、精神障害の治療として“アニマルセラピー”が重要視されるようになっています。犬や猫を抱きしめる時、私たちは心が癒されるような体験をします。アニマルセラピーの効果がよく分かります。

私たちヒーラーは皆、犬や猫が大好きです。タローを飼ってから、いっそう犬や他の動物が好きになりました。人々が犬や猫を家族の一員として可愛がっている気持ちが実感を持って分かります。犬も猫も本当に可愛らしく、一緒にいるだけで心が癒されます。孤独を抱えた人たち――特に身寄りのない老人が犬や猫を子供のように思っている気持ちが手に取るように理解できます。

私は、人々がペットに愛情を注いでいるのは本当に嬉しいのですが、同時に多くの現代人が他者との間に愛情関係を築くことができない現状は、とても気がかりです。ペットを飼っている人たちの中には、ペットとの触れ合いを通して寂しさを紛らわせ、慰めを得たいと思っている人が多くいるからです。

こうした人の場合、自分の心の慰めを得ること以外に思いが進んでいきません。孤独は恐ろしい“魂の毒”です。孤独感にとらわれていると、魂は枯渇し、希望は失われ、生きる力が奪われてしまいます。誰もが孤独を恐れています。貧困や病気は辛いことですが、独りぼっちでいることはそれ以上に辛いことなのです。

そうした孤独感や寂しさがペットを飼うことで癒されるなら、ペットは人間に大きな貢献をしていることになります。しかし、ペットから慰めを得ているだけでは、人間は霊的成長をすることはできません。

私の目には、現在の“ペットブーム”は人間の精神の未熟さを反映しているように映ります。動物との愛情関係だけにとどまって、他者との間に愛情関係を築けない人が多いからです。

人間を相手にすると、犬を相手にするよりもはるかに複雑で難しい問題が発生しますが、その困難が本人の霊的成長を促し、魂を鍛えることになるのです。面倒な人間関係を避けてペットとの愛情関係に逃げ場を求め、癒しを得ようとするなら、結果的に人間にとって最も大切な霊的成長ができないことになってしまいます。

以前には、私たちヒーラー・グループには時々、「ペットが病気になったのでスピリチュアル・ヒーリングをしてほしい」との依頼が寄せられました。その依頼に応え、犬や猫のためにヒーリングをして差し上げたこともあります。

そうした依頼を受けるたびに私は――「ペットとの間に愛の世界をつくるだけでなく、人間との間にも積極的に愛の世界をつくっていってほしい」と思いました。他者との間に深い愛の関係を築く努力を通して、「霊的成長」という永遠の宝を手にしていただきたいと願っています。

(柳辺)