(1)スピリチュアリズムの身体観と健康理論

人間を構成する“5つの要素”

人間の「健康観・病気観」を明らかにするためには、まず人間の構成について知ることが不可欠です。すでに見てきたように、私たち地上の人間は「霊体」と「肉体」という2つの同形の身体が重複して存在することで成立しています。霊体と肉体という材質の異なる2つの身体が、同一場所に重なるようにして私たち人間を構成しています。しかし、人間の構成要素はこれだけではありません。

人間は死んで肉体を脱ぎ去ったあとは、「霊体」だけの存在となって、霊界で新たな人生を出発することになります。霊界に入った人間は引き続き、地上時代と同じような思考活動・知的活動を行います。霊媒現象などで、すでに他界した人間が生前の記憶と知性を携えて出現し、地上の子孫や知人と会話をすることがあります。こうした事実は、人間は死によって肉体を失ったあとも、生前の記憶を持ち続けて意識活動をしていることを示しています。すなわち「霊体」の中には、「心(意識)」が存在しているということを意味しています。それが「霊の心(霊的意識)」です。

霊体に存在する「霊の心」は、最も高次の要素である「霊」の成長レベルによって、その内容が決定されます。霊的成長が進んだ「霊」は、高次の霊的意識を持ち、霊的成長が遅れた「霊」は、低次の霊的意識を持つようになるのです。

また「肉体」には、動物と同じ本能的な心(低次元意識)と低次元の知性も存在します。低次元意識と知性によって人間も動物も、肉体の維持と種族の維持をはかるようになっています。

このように人間は、霊的要素として「霊」と「霊の心」と「霊体」を、物質的要素として「肉体の心(肉体本能)」と「肉体」を有しています。私たち地上人はまさに、霊界にいる“天使”と物質界にいる“動物”を合体させたような存在と言えます。これら5つの構成要素のトータルが、私たち人間なのです。

以上を図示すると次のようになります。

人間を構成する5つの要素

スピリチュアリズムの“健康の定義”

スピリチュアル・ヒーリングの健康理論は、スピリチュアリズムによって明らかにされています。では、スピリチュアリズムでは“健康と病気”を、どのように定義しているのでしょうか。どのような状態のときが健康であり、病気であると考えているのでしょうか。

スピリチュアリズムでは――「人間を構成する要素(霊・霊の心・霊体・肉体本能・肉体)が全体的に調和状態にあるとき、人間は神(宇宙)の摂理に一致し、自然界と一体化し、健康を保つことができるようになる」と教えています。ここにスピリチュアリズムの健康観のポイントが示されています。「人間の構成要素の全体的調和」「神の摂理との一致状態」「自然界との一体化状態」――これがスピリチュアリズムによって示された“健康の定義”です。では、そうした健康状態は、どのようにしたら達成されることになるのでしょうか。

人間を生存させている“生命エネルギー”の観点から、その答えを詳しく見ていくことにします。

「霊的エネルギー循環システム」

私たち人間をはじめあらゆる生命体は、エネルギーを得ることによって生命活動を維持しています。生命を維持するためのエネルギーを“生命エネルギー”と言いますが、私たちの健康は、この生命エネルギーの状態によって大きく左右されることになります。

私たち人間の生存は、外部から“生命エネルギー”を取り入れるところから始まります。人間は「霊的要素」と「肉体(物質)的要素」から成り立っているため、その両方にエネルギーを取り入れる必要があります。霊的部分のエネルギーは、霊界と宇宙に充満している神の“霊的エネルギー”を取り入れることで得られます。一方、肉的部分のエネルギーは、太陽光線や食物・水といった物質を体内に取り入れることで得られるようになっています。

人間にとって問題となるのが“霊的エネルギー”の取り入れです。霊界・宇宙に充満している霊的エネルギーを取り入れることができるのは、人間の最高次元の構成要素である「霊」です。霊的エネルギーが「霊」に取り込まれると、「霊」は霊的エネルギーによって充電され、活性化するようになります。するとその霊的エネルギーは下位の構成要素である「霊の心」に流れ込み、さらに下位の「霊体」へと流れていくようになります。こうして「霊の心」と「霊体」が充電され、活性化することになります。

また、霊的エネルギーは肉的部分にも流れ込み、「肉体本能」と「肉体」を満たし、そこを活性化することになります。この霊的部分から肉的部分に霊的エネルギーが流れ込む接点が、古来“チャクラ”と呼ばれてきた部位です。

このようにして「霊」から取り入れられた霊的エネルギーは、ステップダウンしながら、すべての構成要素に行きわたることになります。

霊的エネルギー循環システム

図の矢印は、“霊的エネルギー”の流れの方向を示しています。この図には太くて長い矢印と、細くて短い矢印の2つがありますが、上位の構成要素→下位の構成要素へのエネルギーの流れはいずれも太くなっていて、主流であることを示しています。それに対して、わずかですが下位の構成要素→上位の構成要素へという逆の流れもあります。身体内のエネルギーの流れは双方向性(バイラテラル)となっており、それぞれの構成要素の間に相互性があることを意味しています。このようにして「霊」に取り入れられた霊的エネルギーは、各構成要素の間を“ステップダウン”と“ステップアップ”しながら、全身を循環するようになっています。

こうした一連の霊的エネルギーの流れを「霊的エネルギー循環システム」と言います。

「霊的エネルギー循環システム」から見た“健康の定義”

ステップダウンする霊的エネルギーが、ステップアップする霊的エネルギーよりも強い(多い)とき、霊的エネルギーは身体の隅々までスムーズに循環するようになり、身体全体が調和状態に置かれることになります。これが、霊的エネルギーが正常に循環している状態です。霊的エネルギーの循環が正常であるとき、人間を構成する“5つの要素”のバランスがとれ、肉体も自然と調和した状態を保つことができるようになります。そして肉体の健康維持のために神が用意してくれた、さまざまなシステム(ホメオスタシス・免疫機能・自然治癒力)が正常に機能するようになるのです。

これについて、もう少し具体的に見ていきます。霊的エネルギーは「霊体」から「肉体」へ流入する一方、逆に「肉体」から「霊体」へ向けて流れるエネルギーもあります。このとき「霊体」から「肉体」へ流れるエネルギーの方が、常に強く(多く)なければなりません。そうしたとき、霊体と肉体の関係は「霊優位」となります。これが正常なバランス関係であって、人間は宇宙・自然界と調和することができるようになります。この状態が“健康”です。反対に「肉体」から「霊体」へ流れるエネルギーが相対的に多くなると両者のバランス関係は崩れ、「肉優位」となって不調和・不自然な状態に置かれることになります。その結果、肉体に異常が発生するようになるのです。

このように人間の健康は、「霊的エネルギー循環システム」をキーワードにした説明によって定義されます。