2)除霊治療

「憑依した霊を取り除いて病気を治す」というシャーマニズムの伝統的な治療法

手かざし療法・手当て療法と同じく、世間でよく知られているスピリチュアル・ヒーリング(心霊的な治療法)に「除霊治療」があります。霊能者が聖水をかけたり、読経をしたり、九字を切るなどの呪術的方法で憑依している“低級霊・未熟霊”を取り除いて病気を治すというものです。こうした「除霊治療(除霊ヒーリング)」は、太古から広く行われてきました。神道におけるさまざまな清めのお祓いも、これに類するものと言えます。

除霊治療も手かざし療法・手当て療法と同様に、用いられる治療エネルギーによって「スピリット・ヒーリング」になったり、「サイキック・ヒーリング」になったりします。現在、世間で広く行われているのは「サイキック・ヒーリング」としての除霊治療です。

多くの人々が「除霊治療」に多大な関心を寄せてきましたが、今日に至るまでその霊的なメカニズムや実態については、ほとんど知ることができませんでした。それをいいことに、ニセ霊能者や宗教組織は霊的事実とは異なるいい加減なことを言って、人々を混乱と不安に陥れてきました。除霊治療には、複雑な“霊的背景”があります。

以下では、それについて詳しく説明していきます。

スピリチュアリズムによって初めて明らかにされた「除霊治療」の霊的事実

太古から地球上のさまざまな地域で、アニミズム・シャーマニズム信仰が行われてきました。そこでは“病気は悪霊が取り憑いて(憑依して)引き起こされるもの”と信じられていました。そして憑依した霊を取り除いて(除霊して)病気を治すための祈祷や儀式・呪術が執り行われました。これが「除霊治療(除霊ヒーリング)」です。

スピリチュアリズムは、これまで地球人類が知らなかった多くの霊的知識を地上にもたらしました。とかく迷信とされがちであった「除霊治療」に、新たな理性の光を当てることになりました。除霊治療の実態が、理性的に納得のいく形で説明されるようになったのです。除霊治療に好意的な人間も「霊的無知」から勘違いや間違った認識をしてきましたが、スピリチュアリズムの登場によって初めて、除霊治療についての正しい理解が可能となったのです。

「除霊治療」の歴史

シャーマニズムの主役である“シャーマン”は、霊界と地上世界の間を取り持つ“霊媒”です。シャーマンは霊界にいる「霊(スピリット)」からのメッセージを地上人に伝えると同時に、地上人に憑依して病気を引き起こしている“悪霊”を取り除くヒーラーの役目も担っています。「除霊治療(除霊ヒーリング)」は、シャーマニズムの中で大きなウエートを占めています。

シャーマニズムは地球上の広範囲の地域で行われている、最も長い歴史を持つ宗教と言えます。その意味で「除霊治療」も、地球上で最も長い歴史を持つ治療法・医術と言うことができます。太古の地球上では、除霊治療はごく当たり前に行われていました。BC(紀元前)10世紀の古代インドでつくられたバラモン教の呪文集には、除霊のための呪文や手法が記されています。その後に確立されたインド伝統医学“アーユルヴェーダ”にも、除霊治療を扱った内容が見られます。

除霊治療を語るうえで真っ先に取り上げるべき出来事は、2千年前のイエスによる奇跡的な“病気治し”です。イエスは、さまざまな奇跡的方法で病人を癒しましたが、その多くが「除霊治療」によるものでした。新約聖書の中には、イエスの除霊治療について次のような記述があります。

「人々は悪霊につかれた者を大勢、みもとに連れてきたので、イエスはみ言葉をもって霊どもを追い出し、病人をことごとくお癒しになった。」

聖書マタイ8章・16節

「そのとき、人々が悪霊につかれた盲人で口のきけない人を連れてきたので、イエスは彼を癒して、物を言い、また目が見えるようにされた。」

聖書マタイ12章・22節

「イエスがお叱りになると、悪霊はその子から出て行った。そして子はその時、癒された。」

聖書マタイ17章・18節

こうした聖書の記述が正しいとするなら、イエスは歴史上、最高の除霊ヒーラー・除霊治療師と言えます。キリスト教徒は“イエスの奇跡の業は、神の一人子であればこそ可能になった”と主張し、他の人間がイエスと同じような奇跡を起こすことはできないとします。しかしイエスが行った「除霊治療(除霊ヒーリング)」は、程度の差はあれ過去から現在に至るまで、多くのヒーラーやシャーマンによって行われてきました。そして実際に、大勢の病人が癒されてきたのです。

日本においても「除霊治療」は古代から行われてきました。その流れは絶えることなく、日本の歴史の中に存在し続けました。日本人は太古から“悪霊の仕業”を恐れてきました。病気や不幸は悪霊が取り憑くことによって生じると考え、悪霊を取り除いたり鎮めることで災いを回避できると信じてきたのです。そして取り憑いた霊を引き離すために、僧侶や修験者によって加持祈祷やお祓いが行われました。古代の日本人の“憑依”への恐れや対処の様子が、平安時代に書かれた『源氏物語』の中に数多く記されています。そうした伝統的な宗教的慣習は、現在の新興宗教の中に「除霊」として引き継がれています。

医学を呪術から切り離した初めての人物が古代ギリシヤ時代のヒポクラテスで、医学の祖・医聖と呼ばれています。一般的には医学は、除霊ヒーリングなどの呪術を排除するところから出発したとされています。そしてそれが近代において、より徹底されることになりました。近代科学を基盤とした“唯物医学”の隆盛にともない、多くの人々は「除霊ヒーリングなどという時代遅れの迷信は姿を消すべきである」と考えるようになりました。

ところがどんなに科学が発達しても、依然として「除霊治療(除霊ヒーリング)」は存在し続けることになりました。除霊治療は医学としては否定され、迷信として退けられたものの、一般大衆はそれを完全に捨て去ることはできなかったのです。除霊治療には、近代の合理主義では説明できない“治療効果”があったからです。迷信として片付けられない医学的な要素が実際にあったからなのです。そのため「除霊治療」は、日本をはじめとする世界中の至る所で今も活発に行われています。

“憑依”と“エクソシズム”

「除霊治療(除霊ヒーリング)」を説明する際に、どうしても取り上げなければならないのが“憑依”と“エクソシズム”です。憑依と除霊ヒーリングは、一体の関係にあります。キリスト教(ローマ・カトリック教会)において行われてきた“エクソシズム”は、まさに「除霊ヒーリング」そのものです。除霊ヒーリングもエクソシズムも、憑依した霊を取り除こうとする霊的な業なのです。

とは言え、これまで地球上には正しい霊的知識がなかったため、人々は憑依についての真相を理解することができませんでした。そして常に的外れな対処をしてきました。地上人類は長い間、憑依に関する霊的事実を知ることなく過ごしてきました。そうした中、19世紀半ばに登場した“スピリチュアリズム”によって本物の霊的知識がもたらされるようになり、地上人類は初めて憑依についての正しい理解が可能となったのです。

“憑依”とは、霊界下層(幽界)にいる“地縛霊”が地上人に取り憑いて、さまざまなトラブルを引き起こしたり悪さをする現象のことです。憑依は「心霊現象」の一種で、その際、霊に憑かれた地上人はしばしば入神(トランス)状態に陥るようになります。

善良な霊による憑依現象は「霊界通信」と呼ばれ、地上人に有益な霊的情報をもたらします。そして役目(通信)が終わると憑依状態は自動的に解除され、あとには何の問題も残りません。霊界通信という憑依現象は、霊と地上人の協力のもとで行われ、憑依の時間も一時的です。それに対して“低級霊・未熟霊”による憑依の場合には、取り憑いた霊は地上人からなかなか離れず、厄介な事態を発生させることになります。そうした出来事の一つが“統合失調症”や“多重人格症”といった精神的な病気です。

さて、キリスト教の中ではこの“憑依”に対してさまざまな見解が示され、それは時代によって大きく変遷しました。憑依現象を“信仰の証(あかし)”であり、善なるものとする時代がある一方、“悪魔(サタン)の仕業”と見なす時代もありました。キリスト教ではほとんどの場合、憑依はサタンや悪霊が取り憑く悪い現象として考えてきました。そして地上人に憑いた悪魔(サタン)を取り除く儀式が行われました。これが“エクソシズム”すなわち“悪魔祓い”です。エクソシズムは現在のローマ・カトリック教会の中でも、かなり重要な位置を占めていますプロテスタントでは、エクソシズムを認めていません)。キリスト教の歴史の中では、霊に憑依された地上人は悪魔(サタン)と契約した人間・魔女と見なされ、徹底して迫害されました。時には火刑に処されるといった悲惨な道をたどることになりました“魔女狩り”は、19世紀のアメリカでも存在しました)

“サタン・魔女”といったものはすべて、霊的知識を知らないところからつくり出された間違った見解です。そもそも神の勢力に対峙するサタンなどというものは、霊界にも地上界にも存在しません。人間が勝手につくり出した架空の存在です。霊的知識に照らしてみれば、魔女とされた人間は「霊媒体質者」であり、一般の人々よりもある種の「霊能力」を多く発揮できる人間であったにすぎません。そうした霊媒体質者は、一定の割合(50~100人中、1人か2人)で存在します。霊媒体質者は、霊界にいる低級霊・未熟霊に憑依されやすい人間なのです。

除霊ヒーリングは、憑依された地上人から“憑依霊”を取り除いて病気を治そうとする治療法です。それに対しエクソシズムは、同じ憑依現象を“サタン(悪魔)”が取り憑いたものと見なし、サタンと対決してこれを取り除こうとします。「除霊」という点ではどちらも同じですが、エクソシズムは憑依霊を勝手に“サタン”と決めつけるという間違った認識をしています。

スピリチュアリズムが明らかにした「憑依現象」の実態

正しい「除霊」の方法を知るためには、“憑依”とはどういうものなのかを正確に理解する必要があります。憑依の実態について何も知らない地上人はこれまで、あまりにも的外れな対処をしてきました。現在でも幾つかの新興宗教では「除霊」が行われていますが、そこには正しい霊的知識はなく、間違った認識のもとで無意味な除霊をしています。一方、除霊治療(除霊ヒーリング)はしばしば商業主義(金儲け)に利用され、多くの人々を騙すための手段となってきました。

先に述べたように“憑依”とは、霊界下層(幽界)にたむろしている“地縛霊”が地上人に取り憑く現象のことです。それによってある種の精神病が引き起こされるようになります。しかし現代医学では、霊の存在も憑依現象も認めません。したがって憑依から精神病が発生することも一切認めようとしませんが、現実に憑依による精神病が存在する以上、現代医学の見解は明らかに間違っています。憑依による病気は、かなりの数にのぼります。

現在医学では“憑依”を、脳の機能障害による異常な意識状態と考えますが、それは正しい認識ではありません。歴史を振り返ってみれば数え切れないほどの“憑依”の実例があります。そして「除霊ヒーリング」によって奇跡的に病気が回復した実例も数限りなく存在します。こうした事実を前にして、“憑依は脳の機能障害による異常な意識状態”と決め付けることは間違っています。そんな単純な理屈で、無数とも言える憑依の現実を説明し尽くすことはできません。無理に説明しようとすればするほど、論理矛盾に陥ってしまいます。

スピリチュアリズムは、霊界からもたらされた「霊的知識(霊的真理)」によって、これまで“謎”とされてきた「憑依現象」の実態を明らかにしました。そして「正しい除霊治療とはどのようなものなのか」を示しました。以下では、スピリチュアリズムによって明らかにされた憑依の実態と、正しい除霊治療(除霊ヒーリング)の方法について見ていきます。心霊現象に関心を持っている人であれば皆、憑依とは霊界にいる霊が地上人に取り憑く現象であることは知っています。しかしそれ以上の詳しい内容を理解している人は、ほとんどいません。

憑依についてはまず、「どのような人間が憑依されるのか?」という点を明確にしなければなりません。地上人の誰もが憑依されるというわけではないからです。地上人の中には憑依されやすい人と、そうでない人がいます。憑依されやすい人とは、これまで何度も述べてきた「霊媒体質者」のことです。人間は誰でも、身体から“生体エネルギー”を放射しています。これが世間でよく言われる“オーラ”です。霊媒体質者とは、オーラの量が一般の人よりも非常に多い人間のことなのです。オーラが多いと霊界の“霊”に感応しやすくなり、その影響を強く受けるようになります。

オーラは半物質・半幽質の性質を持っているため、通常は直接、地上人に働きかけることができない“地縛霊”も、感応するようになります。そして何かの拍子に霊媒体質者のオーラに接触した瞬間、その中に引き込まれてしまいます。霊媒体質者のオーラは、磁石のように幽界の“地縛霊”を引き寄せてしまうのです。地上人のオーラの中に閉じ込められ、身動きがとれなくなってしまった地縛霊は、自分が自分でなくなったような意識状態に陥ります。地縛霊の意識と地上人の意識が融合し、地上人の意識を自分のものとして共有するようになるからです。このように憑依状態のもとでは、地縛霊は自分の意識と地上人の意識の区別がつかなくなります。当然、地縛霊は大混乱に陥ります。

実はこれと同じようなことが、地上人の側にも発生します。地縛霊に憑依されると、自分の意識と霊の意識の区別がつきにくくなり、自分の中に別人がいるような感覚を持つようになります。まるで自分の意識の中に、他人が割り込んできたような感覚です。そうなると自分が自分でなくなってしまい、それがひどくなると自己のアイデンティティーが失われてしまいます。これが「霊による人格の乗っ取り」と言われる現象の正体です。

地縛霊に憑依された地上人には、精神を正常化させようとして「自然治癒力」が働き始めます。自然治癒力は肉体だけでなく、精神レベルにおいても発生します。自然治癒力は、憑依霊をオーラの中から取り除こうと作用します。その排除作用が、憑依している地縛霊にさらなる混乱を与えることになるのです。そうした状態を地上サイドから見ると、地上人が“精神錯乱”を起こしているように映ります。これが「統合失調症(精神分裂症)」です。

地上の霊媒体質者に憑依する霊は、1人(1体)とは限りません。それどころか、複数の霊が取り憑いていることがよくあります。磁石のようなオーラに、多くの地縛霊が引き寄せられてしまうのです。憑依霊が複数になると「憑依現象」は一段と複雑になり、次々と異なる霊の意識と人格が現れるようになります。これが「多重人格症」です。

世間の霊能者の中には、「何百体もの地縛霊が取り憑いている」というようなことを言う者がいますが、それは事実ではありません。憑依霊は、多くても10体くらいまでです。また「蛇や狐が取り憑いて病気を引き起こしている」などと言う者もいますが、それも間違いです。本人にはそのように見えているかもしれませんが、実際は“低級霊”が蛇や狐の姿を装っているだけです。これを「霊の化身現象」と言いますが、低級霊(邪悪霊)が霊能者を騙す目的で、わざとそうした現象を演出しているのです。多くの霊能者が、邪悪霊のイタズラにまんまと騙されています。

とは言っても、憑依現象のすべてがこうした邪悪霊(悪質な低級霊)によって引き起こされているわけではありません。憑依の多くは、霊的に無知な霊性の低い“未熟霊”によって発生しています。霊的無知ゆえに無意識のうちにオーラに引き寄せられ、クモの巣に掛かった昆虫のようにそこから抜け出せなくなり、悶え苦しむことになるのです。

憑依は、摂理に反したきわめて不自然な出来事です。そのため当事者である憑依霊の多くが、ひどい苦痛を味わうことになります。それと同様に、憑依された地上人も大きな苦しみを体験することになります。実はこうした苦しみは、憑依霊と地上人の双方にとって「カルマを清算するプロセス」となっています。憑依の苦しみによってカルマが清算されて消滅すると、憑依状態は自然に解消する方向に展開していくようになります。場合によっては「本物の除霊ヒーリング」を受けられるチャンスが訪れ、憑依霊と地上人が共に苦しみから解放されることになります。

世間一般の除霊の方法

「除霊」とは、憑依した地縛霊を地上人のオーラから引き離すことです。“エクソシズム”では、憑依した霊“サタン・悪魔”とされている)に向けて祈りをしたり、聖書の言葉を語ったり、十字架をかざして除霊しようとします。サタンが嫌がるとされているものを示して、退散させようとするのです。

しかし今述べたように憑依霊の中には、悪意を持って意図的に憑依現象を引き起こしている“邪悪霊”もいます。そうした霊は、サタンなどという空想を信じ込んでいる地上人をからかうために、わざとサタンの振りをします。こうしてエクソシズムでは、“サタンの仕業”と思われるような現象が次々と演出されることになります。そして“邪悪霊”は、あわてふためく地上人を見て、してやったりと面白がっているのです。こうした霊的な事情を知ると、キリスト教で行っているエクソシズムには、ほとんど除霊の効果がないことが分かります。

では、日本の新興宗教で行われている「除霊」はどうでしょうか。オーラの中に閉じ込められて身動きができなくなっている“憑依霊”に向けて、手かざしや手当てなどによって“霊的エネルギー”を送ると、それが憑依霊に届いて絡みついていたオーラの縄目が緩むようになります。手かざしや手当てが効を奏すると、その瞬間に霊は憑依状態から解き放たれることになります。ヒーラーに「霊視力」がある場合には、自分の霊的な手で憑依霊をつまんで取り出し、解放してやることもできます。

また、ヒーラーが患者に霊的エネルギーを与えているうちに憑依した霊が浮かび上がり、患者の意識を支配して語り出すことこれを「浮霊現象」と言います)もあります。そうしたときは憑依霊に対して、「今、どういう状態にあるのか、どうしたらオーラから抜け出して自由になれるのか」を教えてやるようにします。多くの場合、憑依霊は自分が地上人のオーラに捕らわれている実態を自覚すると、自分からそこを抜け出そうとします。ヒーラーが手かざしなどによって霊的エネルギーを送るとより早く抜け出せるようになりますが、時にはそれがまぶしすぎて苦痛を与え、逆効果になることもあります。そうした場合には、すぐ傍に指導霊がいることを憑依霊に教え、その助けを借りて抜け出せるように仕向けます。

物分りの悪い憑依霊に対しては、かつて精神病院で行っていた“電気ショック”を与えるのが効果的です。現在では、医療手段として電気ショックは忌避される傾向にありますが、憑依霊を解放するには、かなり効果的です。ただしこの方法は憑依霊に強い衝撃を与えて強引にオーラから引きずり出すことになるため、当の霊に霊的な自覚がないなら、しばらくすると元通りになってしまいます。そうさせないためには、憑依霊自身の意識の変化が不可欠です。意識の変化がないかぎり、一時的にオーラから引き離すことに成功しても、いずれ元のオーラの中に引き戻されてしまいます。

憑依とカルマの関係

世間で行われている「除霊」の大半が結果的に失敗してしまうのは、こうした霊的事情があるからです。一時的にはうまくいったように思えても、しばらくすると再発してしまいます。ほとんどのヒーラーが「憑依現象」の霊的な背景について、全く分かっていません。そのため一生懸命「除霊ヒーリング」に励むものの、徒労に終わっています。

大半のヒーラーは、カルマについても摂理の支配についても正しい知識を持っていません。病気の治癒は、すべて「神の摂理」のもとで展開するようになっています。“憑依”によって病気が引き起こされて苦しむようになるのも、「カルマ」が消滅して病気が治るのも、すべて摂理の働きによるものです。それを知らずに「何とか自分の力で憑依を解決し、病気を治してやろう」と力んでも、どうにもなりません。ヒーラーが自分一人の力で解決しようとすればするほど事態は悪化し、ヒーラーも患者も家族も疲れ果ててしまいます。憑依状態がひどくなると患者は自殺や失踪などを企て、生命に関わる事件を引き起こすようになります。そうした深刻な状況に至ってしまった場合には、一時しのぎではあってもただちに精神病院に入院させ、現代医学の助けを借りるべきです。

2種類の「除霊治療」

「スピリット・ヒーリング」としての除霊治療と、「サイキック・ヒーリング」としての除霊治療

除霊を試みようとするヒーラーは、オーラに絡まっている憑依霊を解放するために“霊的エネルギー”を与えますが、これには2種類のエネルギーがあります。1つは霊界の医者がつくり出す「スピリット・エネルギー」、もう1つはヒーラーの霊体にある「サイキック・エネルギー」です。どちらの霊的エネルギーも、憑依霊がオーラから抜け出すための“霊的衝撃”をもたらすことになりますが、言うまでもなく霊医によってつくられたスピリット・エネルギーの方が数段強力で優れています。

「スピリット・ヒーリング」として除霊ヒーリングが行われる場合には、すべてが霊医団によって進められます。霊医が直接、憑依霊の説得にあたることもあります。オーラから離れたあと、霊医によってアフターケアが行われることもあります。再び憑依することがないように指導をする、ということです。

それに対して「サイキック・ヒーリング」としての除霊ヒーリングの場合には、憑依霊を一時的にオーラから解き放つことしかできません。オーラから抜け出た霊に対して、働きかけがなされることはありません。したがってサイキック・ヒーリングでは多くの場合、再び憑依が起こり、病気が再発するようになってしまいます。

「除霊治療」の問題

世の中では“憑依”による患者が次々と発生し、それに比例するように多くの除霊ヒーラーが現れています。しかし残念ながら、そうしたヒーラーによる「除霊治療(除霊ヒーリング)」が良い結果をもたらすケースはほとんどありません。その理由は、今述べた内容から明らかです。ヒーラー自身が「霊的真理」に対して無知であることが、その最大の原因です。彼らは憑依の実態について、全くと言ってよいほど知りません。まして憑依による病気が摂理の支配のもとで展開している事実など、何ひとつ理解していません。

世間には、病気の原因をすべて“憑依”に結びつけ、患者や家族に恐怖を与える悪質なヒーラーが大勢います。ニセの祈祷師や霊能者は大袈裟に憑依の恐怖を煽り、デタラメを言って何とか病気を治したいとすがる患者を脅かします。しかし憑依によって直接、肉体の病気が引き起こされるようなケースはめったにありません。

ニセ霊能者の中には、「一人の人間に何百体もの霊が憑いて病気を引き起こしている」「苦しんでいる先祖が子孫に憑依して病気を引き起こしている」「蛇の霊が体に巻きついているため手足や腰が異常になっている」というようなことを言う者がいますが、その言葉はすべて事実ではありません。もし、霊能者にそうした様子が実際に見えているとするなら、それは迷信的な先入観によって霊能者自身がつくり出した“想念霊”、あるいは低級霊が霊能者を騙すためにわざと演出している“化身霊”ということになります。

世間の祈祷師や霊能者・新興宗教の中には、「除霊」や「浄霊」を謳い文句にしている者が多くいます。そこでは、自分たちの除霊がさも最高であるかのような派手な宣伝をします。自分たちの除霊によって憑依が完璧に解決し、病気が奇跡的に治るかのような言い方をします。病気で苦しむ人々が、そうした“ニセモノ”に頼りたくなるのは当然です。

除霊ヒーリングにおける最大の問題は――「ヒーラーが除霊ヒーリングを私利私欲のために悪用している」ということです。「苦しんでいる人を助けたい!」という純粋な動機からヒーリングを行うなら、霊界の協力を得て「本物の除霊ヒーリング」の力を授かることもありますが、大半のヒーラーは出発点から間違っています。除霊ヒーリングを“金儲け”と“人気獲得”のための手段と考えているのです。いい加減なことを言って病気で苦しむ人々を騙し、私利私欲の追求に奔走しています。

多くの祈祷師や霊能者にとって、「除霊ヒーリング」で法外な治療費を患者に請求することは当たり前になっています。そうした悪徳ヒーラー・偽ヒーラーは“低級霊”に魂を売り渡し、せっかくの地上人生を台なしにしています。彼らは死後、犯した不正に相当する苦しみを味わうことで償いをするようになります。