(3)スピリット・ヒーリングの主役「霊医」と、地上の先駆的ヒーラーたち

スピリット・ヒーリングの主役「霊医」とは

スピリット・ヒーリングの主役である「霊医」、すなわち「霊界の医者たち」とは、具体的にどのような存在なのでしょうか。霊の存在を頭から否定する唯物論者には、霊医などというものは到底受け入れることはできません。

死による肉体と霊体の分離

「霊」と言っても肉体という物質的な身体がないだけのことであり、幽質からなる「霊体」という外形のともなった身体を持っています。また「個性霊」同士の間では、お互いの存在を認識し合うこともできますし、コミュニケーションも可能です。さらには地上時代と同じように、活発な思考活動・精神活動もしています。要するに人間は、死後も、地上時代とほとんど変わらない生活をしているということです。違いは、地上時代のような肉体という物質的な媒体を持っていないということだけなのです。

「個性霊」の中には、地上時代を医者や治療家として過ごした者がいます。彼らは、地上時代に学んだ知識を死後もそのまま携えています。時には霊界へ行ってから、さらに新たな知識を身につけるようなこともあります。そうした者たちが、地上の人間の幸せのために何らかの奉仕をしたいと思うようになると、かつての自分と同じような医療に携わる地上人を通じて働きかけを開始することになります。これが「霊界の医者」、「霊医(スピリット・ドクター)」なのです。

スピリチュアリズムでは、こうした「霊界の医者」の主導によってヒーリングが積極的に行われ、死後の世界の存在についての“啓蒙運動”が展開されてきました。この霊医によるヒーリングが「スピリット・ヒーリング」です。

霊医の道具としてのヒーラーの役割

霊医から発せられた強烈で純粋な“治療エネルギー(霊的エネルギー)”は、そのままでは患者の身体に受け入れられません。そこで霊能力を持った地上のヒーラーにいったん霊的エネルギーが投射され、ヒーラーの身体を通過することによって物質性を帯びたエネルギーに変換されます。それが患者に与えられることになります。

地上のヒーラーは、ちょうど電圧を下げるトランスフォーマー(変圧器)のような役割を果たし、「霊医の道具」として利用されるのです。治療の主役はどこまでも「霊医」であって、地上のヒーラーではありません。

変圧器のような役割を果たす地上のヒーラー

最高レベルの治療の可能性

こうしたプロセスを経て患者に取り込まれた“霊的エネルギー”は、患者の最も高次の部分である「霊」の領域にまで達することが可能となります。そして枯渇していた「霊」の領域のエネルギー状態を改善し、充電・活性化させることになります。「霊」を充電したエネルギーはステップダウンして、霊の心(霊的意識)→霊体→肉体へと流れ、身体のすべての構成要素を活性化させることになります。このようにして最高の治療が可能となるのです。もちろん現実には、患者サイドの「霊的エネルギーの受容性」という問題があるため、すべての患者に最高次元の治療結果が実現するわけではありませんが、その“可能性”がもたらされることになるのです。

こうした霊医によるスピリチュアル・ヒーリング(スピリット・ヒーリング)とは異なり、一般のスピリチュアル・ヒーリングでは、地上のヒーラーから発せられたエネルギーが患者の「霊」の領域にまで達することはありません。霊体や肉体といった低い次元の治療領域をカバーするのが精いっぱいです。当然、高い治療結果を期待することはできません。

スピリチュアル・ヒーリングの理想は、全身のバランス・調和状態を回復することですが、スピリチュアリズムのヒーリングにおいてそれが可能となるのは、「霊医」という外部の霊的存在からの強力な働きかけが実際にあるからなのです。

オーダーメイドの“治療エネルギー”と、完全な個別治療

霊医によるヒーリング(スピリット・ヒーリング)のもう一つの重要な点は、「徹底した個別治療」が行われるということです。患者の病気の原因や身体状態は、それぞれ異なっています。全身のエネルギー状態を不調和・アンバランスにしている原因は、患者ごとに違っています。そこで一人一人に合わせたエネルギー治療の方法が必要となります。

霊界の医者たちは、共同作業によって患者に対して特殊な作用をする“治療エネルギー”を準備します。より受け入れやすい治療エネルギーや、エネルギー循環の異常を正常化する治療エネルギーをつくり上げます。霊医たちは、地上の薬剤師が薬品を調合するように、それぞれの患者にふさわしい個人向けの治療エネルギーを準備するのです。その治療エネルギーが、地上のヒーラーを通じて患者に届けられるのです。このように霊医によるヒーリング(スピリット・ヒーリング)では、一人一人の患者に対する「徹底したオーダーメイドの治療」が行われることになります。

こうしたオーダーメイドの治療によって、患者の全身のエネルギーバランスが効果的に取り戻されることになります。もし最初に使用したエネルギーが功を奏さないときには、そのエネルギー投与の反応がフィードバックされ、霊医たちによって治療エネルギーに改良が加えられ、新たな治療エネルギーが準備されることになります。こうして霊医によって次々と治療エネルギーが開発されるため、時間とともに治療効果がアップするようになります。「個別治療の徹底度」という点で、「スピリット・ヒーリング」は他の一般のスピリチュアル・ヒーリングを圧倒しています。こうした理想的とも言えるようなオーダーメイドの個別治療が可能となるのは、まさに「霊医」という特別な霊的存在がいればこそなのです。

スピリット・ヒーリングの地上の先駆者たち

現時点では「スピリット・ヒーリング」は、スピリチュアル・ヒーリング全体の中では5%にも満たない少数派です。ここではスピリット・ヒーリングの先駆者として、4人の英国人ヒーラーを紹介します。

①W・T・パリッシュ

スピリチュアリズムにおけるスピリット・ヒーリングは、英国人「W・T・パリッシュ」に始まると言われています。彼は霊界から、生まれついてのヒーラーであることを知らされます。またその頃、ガンを患っていた妻をヒーリングによって治すことができることも教えられます。そこで霊界の指示に従ってヒーリングをすると、実際に妻の病気が治癒しました。これを機に、彼はそれまでの仕事をやめ、生涯をヒーラーとして捧げる決心をします。パリッシュのスピリット・ヒーラーとしての歩みは、1927年にスタートしました。

パリッシュの治療の噂が広く人々の耳に入るようになると、多くの治療依頼が寄せられ、やがて英国中にその名前が知られることになりました。彼は1年に1万通以上もの治療依頼の手紙を受け取っています。パリッシュは「遠隔ヒーリング」で数千人もの患者の病気を癒し、17年間のヒーラーとしての歩みの中で、彼の手元には50万通を超える感謝の手紙が届けられています。パリッシュは“シルバーバーチの交霊会”に参加したこともあり、シルバーバーチ霊から指導と励ましを受けています。

②C・A・シンプソン

パリッシュとほぼ同じ時期に、「C・A・シンプソン」がロンドンでスピリット・ヒーリングを始めています。シンプソンの支配霊(霊医団の中心霊)は“ラッセルズ”という霊です。ラッセルズ霊は、治療だけでなく霊的真理による「霊的覚醒」の重要性を訴え、肉体の癒しよりも“魂の癒し”を徹底して強調しました。

シンプソンは、ヒーリングを通じて地上人に“霊的救い”をもたらそうとする「スピリット・ヒーリング」の大目的にそって治療活動を進めました。

③W・H・リレイ

1939年、「W・H・リレイ」が英国リーズでスピリット・ヒーリングを開始しました。彼の支配霊(霊医団の中心霊)は、地上時代をインド人として過ごした“レジャン・タク・シン”という名前の霊です。タク・シンは1914年に他界し、その同じ年にリレイが誕生しています。タク・シン霊は、リレイを5年の歳月をかけてスピリット・ヒーラーに育て上げました。

リレイのスピリット・ヒーリングは主に、霊からの指示によって患者に薬草などを教えて病気を治療するというもので、すでに説明した「霊示ヒーリング」に相当します。霊界から示された薬草を処方すると、驚異的な治癒が引き起こされ、たいへんな評判を呼ぶことになりました。リレイはその後、1947年に南アフリカに出向いてヒーリングを行っています。彼も“シルバーバーチの交霊会”に参加したことがあり、シルバーバーチ霊から励ましを受けています。

④ハリー・エドワーズ

1946年、パリッシュが他界し、「ハリー・エドワーズ」がスピリット・ヒーリングの指導的人物になりました。ハリー・エドワーズは、歴史上最高のスピリチュアル・ヒーラーとして世界中の人々から尊敬を集めました。スピリチュアル・ヒーリングが広く世界で知られるようになったのは、彼の存在が大きかったと言われています。ハリー・エドワーズの支配霊(霊医団の中心霊)は、細菌学者として有名だった“パスツール”でした。ハリー・エドワーズの背後にパスツール霊を中心とする霊医団が形成され、患者の治療にあたりました。

ハリー・エドワーズは、毎日平均20通もの治療依頼の手紙を受け取り、その大半の患者に「遠隔ヒーリング」を行っています。治療依頼の多くは、患者の家族や知人・友人からのもので、患者本人はその事実を知りませんでした。患者が知らないところで行われたにもかかわらず、彼の遠隔ヒーリングは目覚しい治療成果をあげていきました。ハリー・エドワーズは休みをとることなく英国全土を回り、行く先々でスピリット・ヒーリングを行いました。彼はあえて難病の患者を求め、それを癒すことで霊界の威力を英国中に示していったのです。

ハリー・エドワーズの治療の結果は、効果が認められたケースが80%、完治したケースが30%でした。エドワーズの治療によって癒された患者の大半が、あちこちの病院を駆けずり回ってきた人間であったことを考えると、彼のスピリット・ヒーリングがいかに驚異的なものであったかが分かります。

ハリー・エドワーズは、大ホールでの“公開ヒーリング”を英国各地で開催しました。そして何千人もの観衆の前で、スピリット・ヒーリングの奇跡的な業を示しました。デモンストレーションでは、彼はわざと医学に見放された難病の患者を壇上にあげ、観衆の面前でその人を癒しています。長年、動かなかった手足が、1回のヒーリングで自由に動くようになったこともありました。松葉杖をついて壇上にあがった患者が、ヒーリングを受けたあとには松葉杖を捨て、自分の足で歩けるようになったこともありました。リューマチで手が変形していて握手すらできなかった患者が、ヒーリングの直後にエドワーズと握手をするといったようなことも起こりました。

ハリー・エドワーズは時に、自らが「幽体離脱」をして患者の所に出向き、ヒーリングをするようなこともありました。ヒーリングのあとでエドワーズは、患者の部屋の様子を正確に述べています。また、霊感がある患者の家族が、エドワーズの幽体が患者を治療する様子を霊視しています。

現代西洋医学の医者は、スピリチュアル・ヒーリングというような治療法はうさん臭い宗教的行為か、まやかしであると決め付けます。そしてスピリチュアル・ヒーリングによる治癒の事実を認めようとしません。当時、ハリー・エドワーズに対しても、多くの医者が非難を繰り返しました。

しかし彼のもとには、英国全土の医師から、自分の手に負えない患者の治療を依頼する手紙が数多く寄せられました。時には医者自身が、自らの病気の治療を依頼してくるようなこともありました。そしてエドワーズのヒーリングによる驚異的な治癒を目の当たりにして、熱心な賛同者になっていきました。また、英国王室にもエドワーズの評判が伝わり、6人もの王室関係者が彼のスピリット・ヒーリングを受けています。

ハリー・エドワーズは“シルバーバーチの交霊会”にたびたび参加して、シルバーバーチ霊に教えを請い、多くの助言を得ています。ハリー・エドワーズという歴史的な大ヒーラーが心の支えにしていたのは、『シルバーバーチの霊訓』という高級霊の教え・霊的真理でした。彼は、「スピリチュアル・ヒーリングを通して人々の魂を覚醒させなさい」というシルバーバーチの教えを忠実に実践しました。そのため霊的覚醒に至る患者が少ないことを悩み、それを訴えて、シルバーバーチから励ましの言葉を受けています。「ハリー・エドワーズの背後に、シルバーバーチあり」と言っても過言ではありません。

ハリー・エドワーズは、患者に治療費を請求することは一切ありませんでした。患者の自発的な献金だけに頼っていたため、しばしば経済的な困窮状態に追い込まれました。ハリー・エドワーズは「霊界の道具」に徹する本物のヒーラーとしての手本を、生涯にわたって人々に示し続けたのです。

ハリー・エドワーズ―スピリット・ヒーリングの様子1

肺気腫によって苦しむ患者の呼吸を正常に回復させるために、助手のレイ・ブランチとともに治療にあたっているハリー・エドワーズ

出典:『The POWER of SPIRITUAL HEALING』

ハリー・エドワーズ―スピリット・ヒーリングの様子2

イギリスのシェアにある治療院で、幼い子供にスピリット・ヒーリングをしているハリー・エドワーズと助手のブランチ夫妻

出典:『Life in Spirit』

今は、ハリー・エドワーズを超える「スピリット・ヒーリング」の時代

ハリー・エドワーズは“シルバーバーチの交霊会”に招かれ、しばしばシルバーバーチからスピリット・ヒーリングに関する教えを受けています。シルバーバーチはエドワーズを“マイ、サン(我が息子よ)”と呼んで、老賢人のような愛情深い態度で教えを説いています。彼は、シルバーバーチから示された知識を拠りどころにして、誠実にスピリット・ヒーラーとしての地上人生を全うしました。

ハリー・エドワーズは、シルバーバーチから「スピリット・ヒーリングの目的は、病気癒しをきっかけにした患者の“霊的覚醒・霊的新生”にあること」を繰り返し教えられました。ある日の交霊会でエドワーズは、「自分のスピリット・ヒーリングは、その本来の目的に十分にかなっていない」と、シルバーバーチに率直に告白しています。その言葉から、彼の誠実さと謙虚さがうかがえます。

ハリー・エドワーズは、何千人、何万人もの観衆を集めて、大規模な“デモンストレーション・ヒーリング(公開ヒーリング)”を催しています。そして数々の“奇跡”とも言えるような驚異的な治癒の事実を見せつけてきました。しかしデモンストレーション・ヒーリングを通じて「霊的覚醒」に至った患者や観衆は、ほんのわずかな数でしかありませんでした。ハリー・エドワーズの病気治療の実績は世間に知れわたり、名声を博すことになりましたが、霊的に見たとき彼のスピリット・ヒーリングはいまだ、霊界から期待される内容を十分に備えているとは言えなかったのです。それをエドワーズ自身はよく自覚していたため、シルバーバーチに先のような告白をすることになったのです。

ハリー・エドワーズの死から、すでに数十年が経ちました。これまで「ハリー・エドワーズのようなスピリチュアル・ヒーラーはもはや現れない」と言われてきましたが、実際にはその後、スピリット・ヒーリングはさらにレベルを向上させ、霊界の意向にかなったより高次元の方向に発展してきました。

今、日本では、スピリット・ヒーリングをきっかけにして霊的真理に目覚め(霊的覚醒をして)、新しく霊的人生を歩み出す人が次々と現れるようになっています。スピリット・ヒーリングが“魂の救い”のきっかけとなるようなケースが、ハリー・エドワーズの時代よりもはるかに増えています。この事実は――「現在は、ハリー・エドワーズのスピリット・ヒーリングを超える時代に入っている」ということを示しています。スピリット・ヒーリングの本来の目的が、単なる肉体の癒しではなく「魂の覚醒」にあることを考えると、現在の日本におけるスピリット・ヒーリングは、ハリー・エドワーズの時代よりもさらに高い次元において歩みを進めていると言えるのです。