(2)スピリット・ヒーリングの「治癒率」について

治癒率への過大な関心

藁(わら)をもつかむような思いで病気を治したいと願う患者にとって、一番知りたい情報は何といってもスピリチュアル・ヒーリングの「治癒率」ではないでしょうか。「スピリット・ヒーリング」が最も効果的な治療法であるなら、治癒率の高さがそれを証明しているはずだ、と考えて当然です。そうした患者や家族の気持ちは、痛いほど理解することができます。

一方、世の中には、「どんな病気も自分の治療法で治すことができる。自分のヒーリングの治癒率は100%だ」と豪語するスピリチュアル・ヒーラーや民間療法師がいて、盛んに宣伝しています。そのため病気で苦しむ患者や家族は疑いを抱きつつも、ひょっとしたら本当に病気を治してもらえるかもしれない、と思うようになります。

患者にしてみれば、「できるだけ霊能力の優れたヒーラーにかかりたい」「治癒率の高いヒーラーの治療を受けたい」と願うのは無理もないことでしょう。治癒率の高いヒーラーがいると聞けば、少々遠くても足を運んで治療してもらおうということになります。

しかし、こうした「霊能力のあるヒーラー」イコール「高い治癒率」という考え方は、大きな錯覚なのです。

スピリチュアル・ヒーリングに対する認識不足と、「治癒率」についての考え違い

「ヒーラーの力量」イコール「治癒率」という認識には、スピリチュアル・ヒーリングに対する2つの根本的な考え違いが含まれています。その1つは、病気はヒーラーによって治してもらえるという考え方、もう1つは、霊的能力の優れたヒーラーなら必ず高い治癒率をあげられるという考え方です。

すでに述べたように、スピリット・ヒーリングを含むスピリチュアル・ヒーリングの治療効果は、ヒーラーの霊的能力よりも、むしろ患者サイドの条件(霊的成長度・カルマの程度・霊体と肉体の質・生活習慣・環境など)によって多くが決定されます。一般の人々はこうした「スピリチュアル・ヒーリングの大原則」を知らないため、ヒーラーに過大な期待を寄せ、ヒーラーの力量によって病気が治ったり治らなかったりすると錯覚します。その結果、高い治癒率を謳う、いい加減な宣伝に騙されることになるのです。

スピリチュアル・ヒーリングに関心を持つ人々は、とかく自己努力の怠慢や霊性の未熟さを棚に上げて、ヒーラーの霊能力だけを問題視します。そしてヒーラーを一方的に批判したり、評判のいいヒーラー探しに奔走し、疲れ果ててしまうことになります。

「治療領域理論」に見る“肉体の癒し”の実態

スピリット・ヒーリングでは必ず、患者の身体にプラスの影響力がもたらされます。「霊」の領域、「精神(霊の心)」の領域、「霊体」の領域、「肉体」の領域のいずれかが活性化されます。スピリット・ヒーリングでは決まって、何らかの治療効果が現れるという意味からするなら、その治癒率は100%と言えます。

一般に「治癒率」とは、肉体の異常(病気)が治る割合と考えられています。それがヒーリングの効果の指標と思われています。そこでは肉体次元の変化だけが取り上げられ、「霊」や「精神(霊の心)」や「霊体」次元での変化は問題にされません。

スピリット・ヒーリングによって、しばしば肉体次元での奇跡的治癒が実現します。しかしスピリット・ヒーリングでは、肉体上の変化は、全身の治癒プロセスの表面的な結果にすぎないと考えます。肉体レベルの症状が消滅するときには、それに先立って、霊レベル・精神レベル・霊体レベルにおいて癒しが実現しています。肉体レベルに症状の変化が見られない場合でも、霊の一部・霊の心の一部・霊体の一部は、治癒していることがあるのです。肉体次元にまで治癒が現れるかどうかは、患者サイドの条件によって決まります。肉体の治癒率を決めるのは、ヒーラーではなく患者本人なのです。

以上の内容は、先に述べた「治療領域理論」に照らしてみるとより明瞭になります。

スピリット・ヒーリングによる、さまざまな治療効果

これらの図は、1人のスピリット・ヒーラーによって“治療エネルギー”が与えられたときの、さまざまな患者の反応の状況を表しています。図の斜線部は、スピリット・ヒーリングによって治癒が引き起こされた「治療領域」です。スピリット・ヒーリングによって治療エネルギーがもたらされた結果、活性化して異常が改善した部分を指しています。(b)(c)(d)には、2人の患者の治療領域が示されています。さらに各図の底辺の太線部分は、ヒーリングによって治癒した肉体の外見上の部分を示しています。大半の人々は、この部分だけを見て“治った、治らなかった”と判断しているのです。

これらの図から明らかなことは、「スピリット・ヒーリング」は肉体レベルだけでなく、「霊」や「霊の心」や「霊体」次元にも、何らかの影響力をもたらしているということです。また、肉体の表面上に結果が現れない場合でも、それ以外の広い部分で確実に治癒が進行しているということです。

“病気が治る”とは?

本当に治っているのか?

治癒率をあげつらうことについては、考慮すべき別の問題があります。そもそも「何をもって病気が治ったと判断しているのか?」ということです。“病気が治る”ということについては、その内容を次のような4つの点から検証する必要があります。

  • ① これまでの病気が完治して、ぶり返しが一切ない
  • ② 病状が好転した(前よりずっと良くなった・苦痛がずっと減少した)
  • ③ 一時的に良くなった。しかし病気がぶり返して以前と同じ状態に戻った(2~3週間してもとに戻った/数日してもとに戻った/数時間してもとに戻った)
  • ④ 何の変化もなかった

一般にはこうした厳密な検証もなく、ただ“治った、治らなかった”と騒いでいるだけなのです。ほとんどのヒーリングや気功・民間療法では、③のケースが圧倒的に多いと思われます。

しかし、これで本当に治ったと言えるでしょうか。また④の何の変化もなかったというケースでも、本当に何の変化もなかったのかどうかは明確ではありません。肉体の表面上には変化が現れなくても、精神レベル・霊体レベルではそれなりの変化が生じている場合もあります先の図の(b)左、(c)右のケース)。治療効果がなかったと、本人が勝手に思い込んでいるだけかもしれません。

このように考えると、単に「治癒率」を云々するのは全く意味がないことが分かります。治癒の本当の意味を理解していないところで勝手に“治った、治らなかった”と論じていても埒(らち)があきません。でたらめな治癒率の宣伝に惑わされたり、騙されるのが関の山です。“治癒”の真の意味が分かると、スピリット・ヒーリングの治癒率をあれこれ言い立てることの無意味さが明らかになります。

「前世のカルマ」による病気は、カルマが消えないうちはどのような治療法でも治らない

治癒率について論じるとき、もう一つの考慮すべき点は「前世のカルマ」の問題です。「前世のカルマ」によって生じている病気は、どのような治療法をもってしても治すことはできません。これはスピリチュアリズムが明らかにした重要な霊的真理です。「カルマ」と言うと、純粋な宗教的テーマであって医学とは無関係と思われるかもしれませんが、現実にはカルマと病気は切っても切れない関係にあります。前世に由来するカルマがあること、またそのカルマによって病気が発生することは厳然たる事実なのです。

前世のカルマがあると「霊的エネルギーの取り入れ口(魂の窓)」に制限が加えられ、これが原因となって肉体次元に病気が生じるようになります。ここで勘違いしてはならないのは、「霊性」と「カルマ」は無関係であるということです。霊性(霊的成長レベル)は低くてもカルマが少ないためにいたって健康という人がいる一方で、霊性は高いにもかかわらず多くのカルマを抱えているために病気がちという人もいます。

「カルマ」による病気の苦しみは、それを通して前世の悪行を償うために、摂理の働きによって引き起こされる現象です。「因果応報(因果律)」という神の摂理の支配によって展開される、宇宙の営みの一つなのです。したがってカルマを償った状態に至らないかぎり、病気は治らないようになっています。どれほどヒーリングを受けても、患者の「霊」は肉体の治癒に必要な霊的エネルギー(治療エネルギー)を取り入れることができません。ヒーラーからの霊的エネルギーに「魂の窓」が反応しないのです。

スピリット・ヒーリングをはじめ、他のいかなる治療法を用いても病気が完治しないということは、否応なく病気の苦しみを受けていかざるをえないということです。しかし実は、その苦しみの体験が「前世のカルマ」を償って霊的成長の道を再び歩み出すための準備のプロセスとなっているのです。

霊的観点に立てば、病気になったのは必ずしも悪いこととは言えません。病気が治らないのは霊的成長の道がリセットされつつある(霊的成長の道へ立ち戻るための準備段階を歩んでいる)ということであって、何も悪いことではありません。問題は、患者自身がそれを不幸ととらえるか、さらなる幸福に至るプロセスととらえるか、ということなのです。大半の人々は霊的視野に立った見方ができないために病気を不幸と思い、苦しみを募らせることになります。

「前世のカルマ」による病気を抱えている人は、想像以上に大勢います。そうした人々がスピリット・ヒーリングに救いを求めるのですが、たとえ彼らがヒーリングを受けたとしても、すぐに病気が癒されることはありません。しかしそうした人々にも、いずれ病気が治る時期が到来します。苦しみの体験を通して「霊」が浄化され「魂の窓」が開かれる準備が完了すると、摂理の働きによってスピリット・ヒーリングを受けるチャンスが訪れるようになります。そして霊的成長の道を完全にリセットするための最後のスイッチが、ヒーラーの霊的エネルギーによって押されることになります。その時、これまで制限されていた「魂の窓」が大きく開かれ、「霊的エネルギー循環システム」が一気に正常化し、長年苦しんできた病気が奇跡的に癒されることになるのです先の図の(a)のケース)

こうした「カルマ」と「病気」の関係を考えると、安易に治癒率をあげつらうことの無意味さが、いっそう浮き彫りにされます。