(7)ヒーリング能力のレベルアップ

サイキック能力からスピリチュアル能力へ

世間で行われている霊能力を開発するための訓練・修行が、いかに的外れで間違っているか、よく理解していただけたものと思います。これまで多くの人間が、きわめてエゴ的で低俗な動機から、あるいは“霊能力を持つことは悟りを得ることである”といった間違った認識から、霊能力の獲得を目指してきました。霊能者としての資質・天性の能力のない者が、無理をして不自然な霊能開発に走ることは“百害あって一利なし”です。そうした不自然な方法によって霊能力・超能力が発現するようになったとしても、人間として一番大切な「霊的成長・魂の向上」を犠牲にし、せっかくの地上人生を台なしにしてしまうことになります。また“低級霊”の格好のターゲットになって新たな「カルマ」をつくり出し、死後、筆舌に尽くしがたい苦しみを味わうことになります。

一方、ヒーラー・霊能者になることが予定されて地上に誕生してきた人間がいます。本来、霊的修行とは、そうした人間が潜在している霊能力を開花させるために行うものです。生まれつきヒーラー・霊能者としての道を歩むように定められていた人間の場合には、瞑想を中心とした正しい修行方法によって、潜在していた霊能力が自然開花するようになります。これがヒーラー・霊能者に至る正当なプロセスです。

ここでは、ヒーリング能力・霊能力を発揮することができるようになった人間が、さらにその霊能力の「質」を高める方法について見ていきます。スピリチュアリズムでは、単にヒーラー・霊能者であるというだけでは評価されません。ヒーリング能力・霊能力があるからといって、それだけで霊的価値が認められることはありません。スピリチュアリズムでは、「霊界の道具」として人類の霊的成長のために霊能力を活用するようになったとき初めて、霊的価値が認められることになります。潜在していた霊能力を発揮することができるだけでなく、その霊能力の質が高められてこそ真に評価されるようになるのです。

霊能力の質を高めるとは、「サイキック能力」を「スピリチュアル能力」にまで引き上げることに他なりません。そのためには霊的法則にそった霊的修行が必要となります。これまで「霊的真理」を知らなかったため、大半のヒーラー・霊能者は霊的に低い次元、単なるサイキック能力のレベルにとどまってきました。あるいは間違ったスピリチュアル能力を身につけることになってきました。

ここではヒーリング能力・霊能力の「質」をアップするための“霊的修行”について学んでいきます。

2つのタイプの「サイキック霊能者」

霊能者としての素質を持って生まれてきた人間は、霊能開発の訓練によって、ある時期に「霊能力」が自然に発現するようになります。その「霊能力」とは、人間の霊体にもともと備わっていた能力です。一般の地上人は、肉体という物質の身体が障壁となって、霊体の能力は内部に閉じ込められたままになっています。ところが霊的素質のある人間は、霊体から肉体に向けて大量の“霊的エネルギー”が流されることによって、霊体の能力が肉体次元においても発現するようになります。これが「サイキック能力」であり、そうした霊的体質を持った人間が、一般的に言う「霊能者」です。こうした人間は、再生前に地上人生を霊能者として送ることを決心してきていることが多いのです。

一方、霊能者としての素質を持っていない人間であっても、一定の訓練を続けることによって霊能力が発現するようになる場合があります。密教行者や修験者などは、不自然な訓練を無理やり続けることによって、後天的に「霊的体質」をつくり上げてしまいます。このように一口に「サイキック霊能者」と言っても、生来の能力(素質)があってなる場合と、無理な修行によって後天的になる場合の2つのケースに分かれます。

そしてこれは、スピリチュアル・ヒーラーについてもそのまま当てはまります。

「スピリチュアル能力」の発現

スピリチュアル・ヒーラーや霊能者には、生まれつき霊能力を持っている人と、無理やり訓練した結果、霊能力を持つようになった人の2つのタイプがあることが分かりました。いずれの場合も発現した霊能力は、もともと霊体に備わっていた能力であることに変わりはありません。こうした霊能力が、これまで述べてきた「サイキック能力」です。世間一般で言う霊能力・超能力とは、この「サイキック能力」のことなのです。ヒーリング能力もサイキック能力の一つであり、他には霊視能力・霊聴能力・霊的触覚能力・霊的臭覚能力・透視能力・サイコメトリー・テレパシー能力などが含まれます。

「サイキック能力」は、霊界の人々の働きかけのもとで、さらに高い次元(スピリチュアル次元)にまで引き上げられるようになります。それが「スピリチュアル能力」です。スピリチュアル能力が発現することによって、数段階もレベルアップした霊能力を発揮することができるようになります。サイキック次元からスピリチュアル次元への移行にともない、霊能力の「質」は格段に飛躍することになるのです。

このように霊能力は、サイキック次元の霊能力(サイキック能力)とスピリチュアル次元の霊能力(スピリチュアル能力)に分けられます。「サイキック能力」は、霊的修行の初期段階において発生する初歩的な霊能力です。「スピリチュアル能力」は、霊界からの働きかけによってサイキック能力が進歩・向上した結果、発生する高次の霊能力と言えます。

ヒーリングについて言えば、サイキック次元では、患者の「霊体」レベルまでを治療領域とする「サイキック・ヒーリング」にとどまりますが、スピリチュアル次元に至ると、「霊」や「霊の心」まで含めた身体全体を治療領域とする「スピリット・ヒーリング」に進化するようになります。

「スピリチュアル能力」は、多数の霊界人の総合力

「サイキック能力」と「スピリチュアル能力」では、そのレベル・質が全く異なります。こうした違いは、何によって生じるようになるのでしょうか。どのようにしたらサイキック能力は、スピリチュアル能力にまで高められるようになるのでしょうか。実はその答えが、「スピリチュアル能力」の本質を説明することになるのです。

地上のヒーラー・霊能者のサイキック能力を、霊界にいる多くの霊たちが利用することによって、地上に莫大な影響力がもたらされるようになります。それが「スピリチュアル能力」です。スピリチュアル能力とは――「霊界にいる多数の霊界人の影響力を地上に反映させることができる能力」と言えます。

サイキック能力では、地上の霊能者個人(1人分)の霊力しか発揮できませんが、スピリチュアル能力の場合には、状況によっては何百人、何千人分もの霊力を発揮することが可能となります。もし、地上の1人のヒーラーに何百人もの霊が働きかけるなら、何百倍もの霊力が発揮されるようになるのです。地上に対する影響力を比較するなら、「サイキック能力」と「スピリチュアル能力」では、1対何百、1対何千もの開きが生じることになります。これがサイキック能力とスピリチュアル能力の根本的な違いです。

サイキック能力の発生源は、地上の1人のヒーラー・霊能者の霊体です。それに対してスピリチュアル能力の発生源は、霊界にいる無数の霊たちということになります。したがってスピリチュアル能力とは――「霊界にいる無数の霊たちの霊力を総合したもの」と言うことができます。

もし地上のヒーラーが、自分のサイキック能力をスピリチュアル能力にまで高めることができるとするなら、それまでとは比較にならないほど大きな働きが可能となります。霊界からの働きかけを、ストレートに地上世界に展開することができるようになるのです。

霊界人の願い

「サイキック能力」を「スピリチュアル能力」にまで高めること

地上人が「サイキック能力」を身につけたとしても、それだけで霊界の人々から評価されることはありません。サイキック能力を「スピリチュアル能力」にまで高めたとき初めて、価値を認められるようになるのです。サイキック能力を持っているというだけでは、霊界人はその人間を道具として用いることはできません。霊界から見たとき、サイキック能力だけでは使い物になりません。当然、サイキック能力しか発揮できない霊能者は、霊界の人々にとっては何の魅力もないのです。

残念ながら地上のヒーラー・霊能者の大半が、サイキックレベルにとどまっていて、スピリチュアルレベルには至っていません。ほとんどのヒーラーがサイキック・ヒーラーであって、スピリット・ヒーラーではありません。ここに霊界の人々の嘆きがあるのです。

地上人類の救済活動を展開するうえで、地上の霊能者が「スピリチュアル能力」を身につけることは、きわめて重要な意味を持っています。霊界から地上界に影響力をもたらすためには、地上のヒーラー・霊能者の能力を、どうしてもスピリチュアルレベルにまで向上させる必要があります。

本物のスピリチュアル能力を身につけるには、すなわち高級霊が利用できるヒーリング能力を獲得するにはどうしたらよいのか?――その答えは「霊性を向上させる」という一言に尽きます。霊性を高める努力こそが、「スピリチュアル能力」を獲得するための霊的修行となるのです。霊性を高める努力とは――具体的には「霊主肉従の努力」と「利他愛の実践」のことです。そしてそれを支えるのが、無私無欲の「道具意識」と「犠牲精神」なのです。

日常生活そのものが、「スピリチュアル能力」を開発するための厳しい霊的修行

本物のスピリチュアル・ヒーラーを目指す者は、日常生活の中で常に「道具意識」と「犠牲精神」を心がけていなければなりません。毎日の歩みそのものが、スピリチュアル能力を開発するための“霊的修行”になっていなければならないのです。

(質問)――霊媒現象の質を高めるための方法をお教え願えませんか。

「霊の道具である霊能者が自分の才能が神聖なものであるとの自覚を得た時から、重大な責任を背負うことになります。まず日常生活において、その才能を傷つけたり汚したりすることのないように心がけないといけません。

次に、その才能を最高の水準にまで高める努力を真剣に行わないといけません。そのためには手にした知識を日常生活の中で実践しないといけません。」

『古代霊シルバーバーチ 最後の啓示』(ハート出版)p.169

「霊の道具として少しでも完璧に近づくことを心がけることです。ご自分の人間性から人間的煩悩をすべてご法度にするくらいでないといけません。そう心がけただけ、その治療家を通して、より多くの霊力が流入します。治療力の質や量を決定づけるのは、その治療家の生活そのものです。」

『古代霊シルバーバーチ 最後の啓示』(ハート出版)p.195

本物のスピリチュアル・ヒーラーになるためには、絶え間ない「自己克己の努力」と「自己滅私の利他愛の実践」が不可欠です。常に高い心境を維持し、自己犠牲を喜び、純粋な奉仕精神を持って献身的に努力することが必要条件と言えます。自分の行為に対して、見返りを求めるようなことがあってはなりません。「霊界の道具」に徹して人生のすべてを捧げたとき初めて、霊界の高級霊はその人間を信頼して用いることができるようになるのです。

本物のスピリチュアル・ヒーラーを目指す生き方は、実に厳しい霊的修行の道です。それは本物のヒーラーになることには、それほど大きな霊的価値があるということを意味しています。「真に価値あるものを手に入れるためには、それに見合った努力と犠牲が必要とされる」――これはまさに「神の摂理」です。自分自身に厳しく臨むことができる人間であってこそ、霊界の人々の力を引き出すことができる本物のスピリチュアル・ヒーラーになれるのです。霊界の道具として地球人類のために貢献する真のスピリット・ヒーラーとして立つことができるのです。